商売設計
コンサルを月額化する前に、継続して提供する価値を決める
公開
約7分で読めます
しろくま先生

月額にしても仕事の中身が変わらないのは、請求の周期だけを変えているからです。顧客が繰り返し必要とすることの探し方、人が担う判断と顧客が進める作業の分け方、対応範囲の決め方を順に書きます。
月額にしたのに、やっていることが先月と同じ。毎月その場で考えて、その場で作って、面談が終わるとまた次の面談まで何も残らない。請求の周期を月に変えても、渡すものを決め直していなければ仕事の中身は変わりません。
先に決めるのは、月額という形ではありません。顧客が繰り返し必要とすることは何かです。そこが決まると、人が向き合う場面と、顧客が自分で進められる場面が分かれ、どこまで対応するのかも書けるようになります。
この記事では、月額サービスの設計を次の順で扱います。繰り返し必要とされることを探す、人の判断と顧客の作業を分ける、面談の間に使える環境を設計する、対応範囲を決める、月額が合わないなら単発を選ぶ。
売上が毎月ゼロから始まってしまう話の全体はコンサルの売上が安定しない理由に、良い仕事をするほど契約が終わる構造そのものは良い仕事をするほど契約が終わるにまとめています。ここではその先にある、何を継続して提供するかを決める工程だけを扱います。
月額化する前に、顧客が繰り返し必要とすることを探す
月額サービスを考えるとき、たいていは請求の側から入ります。三か月分をまとめて月割りにする、面談を月二回と決めて月額にする。この入り方をすると、毎月の中身が「決めた回数の面談」になります。面談がある週だけ提供があり、間の三週間は何も渡していない状態になる。顧客の側から見ると、払っている理由が面談の回数だけになります。
見る場所を変えます。顧客の仕事のうち、事業が続く限り毎月・毎週どうしても発生することは何か。
書き出してみると、たいてい似たものが並びます。発信する文面を用意する。問い合わせに返す。申し込みを受けて案内を送る。既存の顧客に連絡する。次に何をするかを決める。これらは片付きません。今月やっても来月また発生します。
ここで一度、仕事を二種類に仕分けます。
一度やれば終わること — 初期設定、方針の言語化、既存資料の整理、最初の導線づくり
事業が続く限り毎回発生すること — 上に並べたような、毎月形を変えて戻ってくる作業
継続の候補になるのは後者だけです。前者を月額の中身に入れると、終わった時点で払う理由が消えます。逆に、後者を単発で渡すと、渡した直後から顧客は一人で回すことになります。次に会うときには手が止まっていた、ということが起こりやすくなります。
つまり月額かどうかは、請求の都合ではなく、利用が続く理由があるかどうかで決まります。利用が続く理由がある仕事は月額にしても無理がありませんが、理由がないまま月額にすると、続けてもらうための工夫を毎月こちらが背負いやすくなります。ここは断定ではなく、設計の出発点として置いている見方です。
人が担う判断と、顧客が進められる作業を分ける
繰り返し発生することが見えたら、次はそれを誰が担うのかを分けます。ここを分けないまま月額にすると、全部が自分の稼働として毎月戻ってきます。
分け方は、作業の重さではありません。その仕事が、人と人が向き合うことで意味を持つかどうかです。
出典は外部の調査ではなく、saas biz 自身の設計方針です。saas biz は、コンサルタント本人をAIに置き換えるのではなく、対話と対話の間に顧客が実行できる環境を持つ、という考え方でアプリを設計しています(何を人に残し何を道具へ渡すかの線引きはサービスの案内にも書いています)。この設計方針を、読者自身の商品を棚卸しするための表に置き換えたものが次の四分類です。自社で運用しているシートとして示すものではなく、設計の考え方を借りた整理の型として使ってください。
種類 | あなたの仕事での例 | 担い手 | 継続提供の形 |
|---|---|---|---|
意味づけ・最終判断・合意 | 今期どこへ向かうか、何をやめるか | あなたと顧客 | 対話の場に残す |
顧客理解・仮説・判断材料づくり | 相手の状況の整理、次の一手の候補出し | あなた | 対話へ持ち込む材料にする |
反復する作業・下準備 | 文面づくり、案内の送付、記録、手順の実行 | 顧客 | 手順と道具を渡す |
信頼が更新される接点 | 率直な指摘、約束、振り返り | 人と人 | 仕組みに置き換えない |
上の二段は、あなたが担うから価値があります。相手の事情を知っていて、過去の経緯を覚えていて、言いにくいことを言える立場にいる人にしかできません。
下から二段目は違います。あなたがやらなくても成立するのに、いまはあなたがやっている部分です。ここが月額の中身の中心になります。顧客が自分で進められる形にして渡すと、面談の間も事業が動きます。
いちばん下は、効率の話を持ち込まない場所です。約束を思い出させる連絡、厳しい指摘、うまくいかなかった月の振り返り。ここを手離れよくすると、関係そのものが薄くなります。
面談の間に使える環境を設計する
分けたあと、顧客が自分で進める側をどう渡すか。ここが月額の設計そのものです。
渡すのは、判断基準・手順・道具の三つです。あなたが毎回口で説明していること、毎回同じ形で作っているもの、見るときに必ず確認している点。それを顧客が手元で使える形にします。
設計するときの見方は一つです。顧客がその道具を開く場面が、実際にいつ来るか。
機能から考えると、使われないものが増えます。顧客の一週間を思い浮かべて、月曜の朝に何をするか、申し込みが入った直後に何をするか、うまくいかなかったときに何を見るか。その場面に対応するものだけを置きます。
置いたあと、三つだけ確認します。
顧客が一人で開けるか(毎回こちらに聞かないと使えない形になっていないか)
開いた場面で、次の一手が決まるか(情報が並んでいるだけになっていないか)
使った結果が、次の対話へ持ち込める形で残るか
三つ目が抜けやすいところです。顧客が環境を使って進んだのに、その中身が対話へ戻ってこないと、面談でまた一から状況を聞くことになります。そうなると環境があってもあなたの稼働は減りません。
同じ説明を繰り返してしまう状態からの抜け方は売上が増えるほど忙しくなる個人事業主へにも書いています。
対応範囲と相談へ戻す場面を決める
月額サービスで最後まで決めずに始めてしまいがちなのが、どこまで対応するかです。「相談し放題」を前提にすると、使われない月は申し訳なくなり、使われる月は稼働が読めなくなります。どちらの月も、こちらが落ち着きません。
範囲は、断る言葉ではなく人が入る条件として先に書くと決めやすくなります。
毎月必ず渡すもの(環境の更新、定例の対話、その月の判断材料)
顧客が自分で進める範囲(手順と道具でできること)
人が入る条件(判断が要るとき、前提が変わったとき、うまくいかない理由が分からないとき)
返事の目安(いつまでに、どの経路で)
範囲の外(別の依頼として扱うもの)
三つ目を先に書いておくと、顧客は迷ったときに遠慮せず戻ってこられます。範囲を決めることは、関わりを減らすことではありません。どの相談が本題かをお互いに分かっている状態にすることです。
なお、ここで決めた範囲は、あなたが顧客に対して負う責任の範囲でもあります。顧客が環境を使って出した結果そのものは顧客のものですが、渡した判断基準と手順が適切かどうかはあなたの仕事です。この線引きを書いていないと、結果が出なかった月にだけ責任が寄ってきます。
継続利用の理由がなければ、単発提供を選ぶ
ここまで書いておいて逆のことを言いますが、全部の商品を月額にする必要はありません。
次のような場合、月額はうまく合いません。
一度きりの移行や立ち上げで、終わったら同じ作業が発生しない
顧客の事業に、毎月繰り返す工程がそもそも少ない
環境を渡しても、顧客がそれを開く場面が月に一度も来ない
こういう仕事を月額にすると、続けてもらうための理由を毎月こちらが用意することになります。それは価値の提供ではなく、引き止めの工夫になっていきます。
単発で渡し切って、必要になったらまた声をかけてもらう形のほうが、お互いに健全な場合があります。区切りを最初に決めておくと、終わりが失敗に見えません。
これは仮説ですが、月額が合うかどうかの分かれ目は、顧客の事業に「毎週開く画面」があるかどうかだと考えています。開く場面がある仕事は継続提供に向き、無い仕事は単発に向きます。自分の商品がどちらか迷ったら、顧客の一週間を書き出して、開く場面が実在するかを見てください。
次にやること
今いる顧客をひとり思い浮かべて、その人の仕事で毎週発生することを三つ書き出してください。そのうえで、上の四分類のどこに入るかを一つずつ置きます。
いちばん下から二段目(反復する作業・下準備)に入ったものが、あなたが継続して提供できるものの候補です。新しく作る必要はありません。すでに何度も渡しているものが素材になります。
説明会では、ここで書いた「対話と対話の間の環境」を、実際の画面を出しながら順番に扱っています。自分だけが使う道具を探している方や、顧客への責任は持ちたくないという方には向きません。無理にお誘いはしません。
[CTA]説明会で、実際の画面を見ながら話しています → 説明会の案内を見る



