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商売設計

コミュニティを作る前に、交流の価値と実行の支援を分ける

公開

約6分で読めます

しろくま先生

継続の場を作るかどうかを、参加者が交流を必要としているかと、運営者が続けられる範囲かの二つから判断します。運営者に残る仕事の洗い出し方と、作る・小さく試す・作らないの選び方を整理します。

継続して使ってもらえる場を作りたいとき、最初に浮かぶのがコミュニティです。

ただ、開設を決める前に分けておきたいものがあります。参加者同士が交流することで生まれる価値と、参加者が自分の課題を前に進めるための支援です。

この二つは一緒に語られやすいのですが、必要としている人も、運営者が負う仕事も違います。分けないまま始めると、やり取りが静かになった月に「今月は何もなかった」と読まれてしまいます。

この記事では、作るかどうかを決める前に確かめる順番を整理します。作らないという判断も、はじめから選択肢に入れます。

参加者が求めるのは、交流か実行の支援か

参加者が場に残る理由は、大きく二つに分かれます。

  • 同じ立場の人と関われること — 悩んでいるのが自分だけではないと分かる、他の人のやり方が見える、聞ける相手がいる

  • 自分の課題が前に進むこと — 次に何をするかが分かる、作業する場所がある、記録が残る

前者は人との関係から生まれ、後者は環境から生まれます。どちらも本物の価値ですが、切り分けずに一つの場へまとめると、交流が減った時期に実行の支援まで止まって見えます。

まず、顧客が止まっている場所を二つに分けて確かめます。ここで決めるのは「どちらの必要があるか」までで、作るかどうかはまだ決めません。

図解

この図で分けるのは必要の種類までで、開設するかどうかは次の段で担える運営と合わせて決めます。

交流そのものが価値になる場面を確かめる

交流を必要とするかは、こちらの想像ではなく、顧客の質問から読み取れます。

確かめ方は一つです。直近に受けた質問を並べ、自分が答えれば済むものと、他の参加者の経験でなければ答えられないものに仕分けます。

他の参加者の経験が要るのは、たとえば次のような質問です。

  • 同じ業種で、実際にやってみた人がどうなったか

  • 判断が分かれる場面で、他の人が何を選んだか

  • 続けている人が、どこで気持ちが切れそうになったか

これらは、提供者が一人で答えると一般論になります。ここに人数分の答えが集まる場は、それ自体が価値です。

逆に、仕分けた質問のほとんどが「自分が答えれば済むもの」だったなら、交流の場は今の課題の答えではありません。教材と案内を整えるほうが先になります。繰り返しの説明が中心なら、講師が同じ説明を繰り返す状態から抜ける方法で分け方を整理しています。

運営者が関わり続ける仕事を洗い出す

交流の場は、置いただけでは動きません。運営者側に、続く限り発生し続ける仕事が残ります。開設を決める前に、その仕事を先に書き出します。

下の表は、毎週こちらから話題を出し、月に一度集まり、相談には全員へ個別に返すという運営の仮定を置いた例です。頻度も増え方も運営の形で変わるので、自分が想定している形に置き換えて書き出してください。

運営者の仕事

起きる頻度(仮定例)

参加者が増えると

話題を出す・投げかける

毎週

ほぼ変わらない

予定と使い方を案内する

毎月

ほぼ変わらない

集まる日程を調整する

毎月

少し増える

個別の相談に返す

随時

全員へ個別に返す形なら、人数に応じて増えやすい

静かな人に声をかける

随時

一人ずつ声をかける形なら、人数に応じて増えやすい

この表で見るのは、合計の量ではなく右の列です。人数に応じて増えやすい仕事が下二つに集まっているなら、参加者が増えるほど運営者の時間が削られやすくなります。売れるほど負担が増える形になっていないかを、開設前に確認します。

そのうえで、自分に問いを一つ置きます。

この仕事を、来月も再来月も同じ熱量で続けられるか。

続けられないと感じるなら、設計が足りないのであって、コミュニティという形が悪いわけではありません。頻度を下げる、担当を分ける、対象を狭めるといった調整が先に要ります。

実行支援を交流の活発さに依存させない

顧客の仕事が進む支えは、性質の違う三つに分かれます。

  • 教材 — 分かる状態をつくる。ただし、分かっても手が動くとは限らない

  • 交流 — やってみようという気持ちを支える。ただし、他人の気持ちは思いどおりにならない

  • 実行できる環境 — 入力する場所、順番、期限の案内、記録が残ることで、仕事そのものが進む

コミュニティを作るときに起きやすいのは、三つ目を二つ目に肩代わりさせることです。場が活発なあいだは進んでいるように見えますが、やり取りが静かになると実行まで止まるおそれがあります。気持ちの起伏が、そのまま顧客の成果の起伏になりやすい形です。

分けられているかを確かめる問いも一つです。

自分が一週間その場に出られなかったとき、顧客はどこまで自分で進められるか。

案内も記録も止まるなら、実行の支援が交流に乗っています。教材を渡すだけでは進まない理由は、オンライン講座を作っても忙しさが減らない理由でも整理しています。

作る・小さく試す・作らないを判断する

ここまでの二つ、顧客が交流を必要としているかと、運営者が続けられる範囲かを組み合わせます。選ぶものは三つですが、同じ「作らない」でも理由が変わります。

顧客の必要

自分が担える運営

選ぶもの

他の参加者の経験が要る質問が多い

続けられる形にできる

作る。交流の場をつくり、実行の場も要るなら別に設計する

他の参加者の経験が要る質問が多い

今の形では担えない

今は作らない。頻度・対象・対応範囲を調整し、担える見通しが立ってから開く

交流が要る質問はあるが多くない

判断がつかない

小さく試す。既存顧客の数名と、期間を決めて一度やってみる

自分が答えれば済む質問が大半

—

作らない。教材や案内の不足を確認し、実行の場も要るなら整える

二行目は、顧客の必要が無いのではなく順番の問題です。必要があるのに運営が回らない形で開くと、参加者にも運営者にも負担が残ります。担える形へ調整してから開きます。

小さく試す場合は、終わりの日を先に決めます。終わりが無い試行は、そのまま本番の運営になり、判断する機会を失います。

作らない判断は、後退ではありません。交流が要らない顧客に交流の場を渡すと、参加しない人が増え、運営者だけが場を保つ形になりやすくなります。

saas biz では、交流の場と、顧客が自分で進める環境を別々のアプリとして持てます。どちらか片方だけから始めることもできます。

交流と実行の分け方を実際の画面で見る

まとめ

コミュニティを作るかどうかは、形から決めません。

  1. 顧客の質問を、自分が答えれば済むものと、他の参加者の経験が要るものに仕分ける

  2. 運営者側に残る仕事を書き出し、人数に応じて増えやすい仕事がどれかを見る

  3. 実行の支援を、交流の活発さから切り離して置く

  4. 作る・小さく試す・作らない、のどれかを選ぶ

交流には交流にしか出せない価値があります。同時に、顧客の仕事が進むことは、場の盛り上がりとは別に用意できます。二つを分けておけば、どちらかが静かな月でも、もう一方が動き続けられるように設計できます。

この記事の下敷き

この記事は、自社の説明会で使っている資料から再構成したものです。

  • 説明会資料の「続く理由」の節 — 継続の場に人が残る理由として挙がる、仲間・交流・質問と、運営側に発生する企画・投稿・声かけ・返信の対比

  • 同資料の「個人のインフラ」の節 — 知識を渡すもの、気持ちを支えるもの、仕事が進むものを三つに分ける整理

開設前の判断表と、運営の仕事を書き出す表は、上の考え方を「作るかどうかを決める場面」に合わせて本記事で組み直したものです。資料にそのまま載っている表ではありません。表の頻度と増え方は仮定を置いた例で、自社でこの形の場を運営した結果を示すものでもありません。記事の著者名と更新日は記事ページの冒頭に表示されます。

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