本文へスキップ

使い続ける価値

顧客に依存させず、選ばれ続けるサービスとは|囲い込みと役に立つ継続の違い

公開

約7分で読めます

しろくま先生

顧客を依存させることと、必要な時に自分で使えることは別のもの。既存顧客一人の「また使いたい」理由から、使うたびに前へ進む利用場面、使った後に残るもの、人へ戻す場面までを比較表と図で整理します。

顧客に続けてもらうには、手放せなくなる仕組みが要る。そう考えて、連絡の窓口や資料を自分の手元に集め、顧客が一人では進めない形にしてしまうことがあります。

先に答えを書きます。顧客を依存させることと、顧客が必要な時に自分で使えることは、別のものです。 前者は「離れにくいから続く」状態で、後者は「使うたびに仕事が前へ進むから続く」状態です。選ばれ続けるサービスが目指すのは、後者です。

契約が終わるたびに顧客との接点が途切れる構造そのものは、契約が終わるたびに顧客接点が切れる状態から抜けるにはで整理しました。この記事は、その先で「いま続いているのは、どちらの理由なのか」を見分け、役に立って続く側へ寄せる手順を扱います。

囲い込みで続く状態と、役に立って続く状態を分ける

続いているように見える二つの状態は、外からは似ています。違いは、顧客が何をしているかと、誰が何を引き受けているかに出ます。

見るところ

囲い込みで続く状態

役に立って続く状態

顧客がサービスを開く理由

開かないと手続きや連絡が進まない

開くと自分の仕事が一つ前へ進む

困った時の動き

提供者に聞くまで止まる

まず自分で進め、迷いが残れば相談する

使った後、顧客の側に残るもの

ほとんど無く、提供者の手元に集まる

成果物や判断材料が、顧客自身も使える形で残る

提供者の時間の使い方

同じ説明と確認を繰り返す

判断が要る場面の対話に使う

続ける理由の置き場所

離れにくさ

使うたびに得るもの

この表は、顧客や提供者の人柄を比べたものではありません。利用の行動と、責任の分け方の違いです。囲い込みの側は、離れにくさで続きます。そのぶん顧客は「続けたい」ではなく「やめにくい」と感じやすく、提供者の側も確認と説明を抱え続けます。

役に立って続く側は、離れにくさを続く理由にしない設計です。それでも使われるのは、使うたびに得るものがあるからです。続く理由が顧客の側にある。この形を目指します。

いま続いている理由を点検する

自分のサービスがどちらに寄っているかは、次の五つの問いで確かめられます。答えが「いいえ」になる問いが、見直す場所です。

  1. 提供者が一週間返信できなくても、顧客は今日の仕事を進められるか — 進められないなら、続く理由の多くが提供者の手の中にあります

  2. 顧客がサービスを開く理由は、手続きではなく自分の仕事か — 提出・報告・予約のためだけに開いているなら、使う理由は顧客の側にありません

  3. 使った後、顧客の手元に何かが残るか — 残る物が無ければ、次に開く理由も生まれにくくなります

  4. 相談は、迷いが残った時に来ているか — 毎回の操作のたびに質問が来るなら、自分で使える形になっていません

  5. 続けるかどうかを、顧客が自分の仕事の進み方で決められるか — 「やめると困る」形で説明していないかを見ます

一つ目の問いは、説明会の資料で提供者に向けている問いを言い換えたものです。資料には、こう書いてあります。あなたがいなくても、そのお客さんが明日も使えるものは何ですか。

この点検は、顧客を突き放すためのものではありません。提供者が関わる場面を、判断が要る時に絞るためのものです。

顧客が「また使いたい」理由を一つ見つける

点検で見直す場所が見えたら、既存顧客一人に戻ります。提供者が続けてほしい行動から考えると、続けてもらうための仕掛けづくりに寄っていくからです。

その人について、本人の言葉で三つを確かめます。支援が終わった後も実現したいこと。一人では次の一歩が出にくくなる繰り返し止まる場面。その場面で自分で前へ進むための必要な助け。聞き取りの進め方と、誰が何を決めるかの分け方は顧客が使い続けるサービスの役割分担|誰が決め、誰が実行するかで詳しく書いています。

使うたびに前へ進む行動へ落とす

見つけた理由は、そのままでは使われません。顧客が必要な時に自分で進められる、一つの利用場面へ具体化します。書き方は一文で十分です。

この場面で、このサービスを開くと、この仕事が一つ前へ進む。

たとえば「毎月の発信の下書きで手が止まる」なら、「月初に下書きの型を開くと、その月の一本目の骨組みができる」。「講座の復習で同じ質問が出る」なら、「質問が浮かんだ時に教材の該当箇所を開くと、自分で答えにたどり着ける」。

一文にできない場面は、まだ使われる形になっていません。場面を小さく切り直します。

使った後に残るものを確かめる

使うたびに前へ進んだかどうかは、操作できたかではなく、使った後に何が残ったかで確かめます。点検の三つ目の問いを、四つに分けて見ます。

残るもの

例

後日の確かめ方

成果物

下書き、ページ、配信文、教材の記録

顧客が次の仕事でそれを使い回したか

判断材料

自分の言葉で整理した選択肢や基準

次に迷った時、それを見返して決めたか

次の実行

使った後に顧客が自分で決めた次の一手

実際にその一手が進んだか

戻り先

迷った時にどこへ戻ればいいか

迷いが出た時、止まらずに相談へ来たか

四つのうち何も残っていなければ、その利用場面は役に立っていません。場面の置き方か、渡した中身を見直します。後日もう一度使われたかどうかも、ここで一緒に見ます。

コンサルを月額化する前に、継続して提供する価値を決めるで書いたとおり、請求の周期を決めるのはこの確認の後です。使った後に残るものが見えていない段階で継続の形だけ決めると、続けてもらうための説明を提供者が抱え直すことになります。

人へ戻す場面を先に決める

顧客が自分で使えることと、人との対話を減らすことは、同じではありません。下書き、整理、繰り返しの作業はサービスの側で支え、何を目指すか、どの案を採るかは、提供者と顧客の対話の場に残します。

困った時に自分で使って前へ進む道と、迷いが残った時に人へ相談して戻る道の二つを描いた図
困った時に自分で使って前へ進む道と、迷いが残った時に人へ相談して戻る道の二つを描いた図

この図には、契約の継続を終点として描いていません。続けるかどうかは、この二つの道が顧客の役に立っているかで顧客が決めることです。

先に決めておくのは、どこで人へ戻すかです。「この判断は一人で決めない」「この場面で止まったら相談する」を導入の時にそろえておくと、顧客は一人で進める場面と相談する場面を迷わずに分けられます。

向かない場合

どの支援でも、顧客が使い続ける形にできるわけではありません。次に当てはまる時は、無理に継続の商品へ変えない方が顧客のためです。

  • 継続して使う行動が無い — 一度で解決し、その後に繰り返す場面が出てこない支援

  • 顧客本人が使わない — 実際に手を動かすのが提供者だけで、顧客は受け取るだけの支援

  • 結果を提供者が約束する前提 — 顧客の成果を提供者の成果として引き受ける形の支援

三つ目は特に注意が要ります。顧客の成果を提供者が請け負う形のまま継続にすると、成果が出ない月の負担がすべて提供者に戻ります。顧客が自分で使って前へ進む形とは、責任の置き場所が逆です。

まとめ

顧客を依存させずに選ばれ続けるための順序は、次のとおりです。

  1. いま続いている理由を、五つの問いで点検する

  2. 既存顧客一人の「また使いたい」理由を、本人の言葉で確かめる

  3. その理由を、自分で進められる一つの利用場面に落とす

  4. 使った後に残るものを、後日の使われ方で確かめる

  5. 迷いが残った時に人へ戻る場面を、先に決めておく

離れにくさではなく、使うたびに得るもので続く。続く理由が顧客の側にある状態が、依存とは違う継続です。顧客が使うサービスを自分の商品名で届ける仕組みは、saas biz のサービス紹介にまとめています。

顧客が使い続けるサービスを自分の名前で持つ形を、説明会で見る

この記事の下敷き

この記事は、自社の説明会で使っている資料と、顧客向けの案内文の方針から再構成したものです。

  • 説明会資料の案内部分 — 「あなたがいなくても、そのお客さんが明日も使えるものは何ですか」「人は判断。アプリは実行。」

  • 顧客向け案内の方針 — 最初に棚卸しするのは提供者が続けてほしい行動ではなく、既存顧客一人が実現したいこと、繰り返し止まる場面、その時に必要な助けであるという順序。確かめるのは操作できたかではなく、目的が前へ進んだか、後日また使われたかであること。「依存されるから続くのではなく、役に立ち続けるから続く」という原則

比較表、五つの点検の問い、残るものの表、二つの戻り道の図は、上の考え方を本記事で組み直したものです。資料にそのまま載っている表ではありません。本文の例は書き換えて使うための例で、効果を確かめた結果ではありません。記事の著者名と更新日は記事ページの冒頭に表示されます。

次の一歩を具体的にする

saas bizの仕組みと料金を見る