仕組みづくり
顧客にAIツールを渡すとき、最初の作業メモに何を書く?目的・材料・確認・持ち帰りの五欄
公開
約7分で読めます
しろくま先生

顧客にAIツールのリンクだけを渡すと、面談で決めたことが翌日の作業まで届きません。作りたいもの、合意した目的と読者、入れてよい材料、人に確認する箇所、次の対話へ持ち帰るもの。五欄の作業メモの書き方と架空の記入例をまとめました。
顧客との面談で「次はブログ記事を一本進めましょう」と決まった。記事を書くアプリのリンクも送った。それなのに、翌週の面談で出てくるのは「まだ手を付けられていません」か、あなたが引き取って直すことになる原稿。そんな経験があるなら、足りなかったのは道具ではなく、道具に添える一枚のメモかもしれません。
先に答えを置きます。顧客にAIツールを渡すときは、リンクと一緒に「今進めたい作業」と「人に確認してから進める箇所」を書いた短い作業メモを渡します。 欄は五つで足ります。作りたいもの、面談で合意した目的と読者、入れてよい材料とまだ確かめていない材料、確認してから進める箇所、次の対話へ持ち帰るもの。
この記事では、その五欄の書き方と、ブログ原稿を例にした架空の記入例を置きます。アプリを渡せば顧客が一人で進められるようになる、と約束するものではありません。メモは、面談で決めたことを翌日の作業までつなぐための橋です。
提供の前に「誰が決め、誰が実行するか」を分ける話は「顧客が使い続けるサービスの役割分担」で、操作で詰まった後に誰が答えるかは「顧客にアプリを渡したら、操作の質問は誰が答える?」で扱いました。この記事はその間、提供を決めた後に最初の作業へ添えるメモに絞ります。ログインの案内やURLの渡し方はここでは書きません。
面談とアプリの間には、作業の空白がある
面談で決めたことと、顧客が翌日に一人で進める作業の間には、空白ができやすいものです。助言が良くても、何から入力し、どこまで進めてよいかが顧客の側に残ると、手が止まります。止まった顧客を気づかうほど、提供者が原稿を引き取ることになり、いつの間にか代わりに作る仕事へ戻っていきます。
汎用のAIを紹介する、テンプレートを送る、チャットで声をかける。どれも一時的には進みます。けれど、「何のために」「何を材料に」「どこで止まって相談するか」が書かれていないと、空白はそのまま残ります。
AIのツールは、決まった意図を下書きや構成に変えるのが得意です。逆に言えば、意図が決まっていない状態で渡すと、もっともらしいけれど事業と噛み合わない文章が出てきます。 作業メモは、その意図を面談の外へ持ち出すための入れ物です。
作業メモの五つの欄
メモは長くなくて構いません。次の五欄を一行から数行で埋めておくと、顧客は最初の一歩を決めやすくなります。
欄 | 書くこと | 書けない時に見直すこと |
|---|---|---|
1. 作業で作りたいもの | 今回進める成果物を一つだけ。「記事」ではなく「どんな記事を一本」まで | 面談で次の一歩が決まっていない |
2. 面談で合意した目的と読者 | 誰に読んでほしいか、読んだ後どうなってほしいか | 目的が提供者の頭の中にしかない |
3. 入れてよい材料/まだ確かめていない材料 | ツールに入れてよい資料と、入れる前に確認が要る資料を分けて書く | 材料の扱いを顧客と話していない |
4. 人に確認してから進める箇所 | 主張が事実か、公開してよいか、など顧客が一人で決めない点 | 判断の線を引いていない |
5. 次の対話へ持ち帰るもの | 下書き、迷った箇所、聞きたいこと | 次に会う場が決まっていない |
右の列は、メモを書こうとして手が止まった時に見る場所です。書けない欄があるなら、道具を足す前に、その欄を顧客との対話で決めます。 欄が埋まらないまま別のアプリを増やしても、空白の場所が移るだけです。
1. 作業で作りたいもの
一枚のメモに書く成果物は一つです。「発信を整える」のように広く書くと、顧客はどこから始めるか迷います。「来月の講座案内につながるブログ記事を一本、構成まで」のように、作業の終わりが見える粒度にします。
2. 面談で合意した目的と読者
面談で話したことを、顧客の言葉で書き残します。提供者の言葉で書くと、顧客がツールに入力するときに言い換えが要り、そこでずれます。読者は「誰でも」ではなく、一人の人を思い浮かべられる書き方にします。
3. 入れてよい材料と、まだ確かめていない材料
ここは丁寧に分けます。AIのツールに入れてよいかどうかは、材料ごとに違います。自分で書いた文章や公開済みの情報は使いやすい一方で、顧客の先にいるお客さまの声や社外の資料は、使ってよいかを確かめてからにします。
メモには「入れてよい」と「確かめてから」の二つの欄を作り、迷う物は後者へ置きます。何でも入れてよい、とは書きません。 扱いが分からない資料は入れずに、次の対話で一緒に決めます。
4. 人に確認してから進める箇所
ツールが出した構成や原稿を、顧客が一人で決めてよい所と、提供者と確かめてから進める所を分けます。たとえば、書いてある内容が事実かどうか、事業の方針と合っているか、外に出してよいか。ここは対話に残す判断です。
この欄があると、顧客は「全部自分で決めなければ」と構えずに済みます。止まってよい場所が先に分かっているからです。
5. 次の対話へ持ち帰るもの
作業の終わりに何を持ってくるかを書きます。途中までの下書きでも、迷った箇所の一覧でも構いません。大切なのは、持ち帰るものを顧客が選んで共有する形にすることです。提供者が顧客の画面をいつでも開いて中身を見る前提にはしません。顧客の作業場所は顧客のものです。共有された下書きと疑問をもとに、次の面談では生成ボタンの押し方ではなく、主張の妥当性や次の判断を話せます。
架空の記入例: ブログ原稿を進める顧客へ
以下は説明のための架空の記入例です。実在の顧客や運用の記録ではありません。地域の小さなお店を支援している人が、自分の顧客に記事づくりを進めてもらう場面を仮に置いています。
欄 | 架空の記入例 |
|---|---|
1. 作りたいもの | 来月の店頭イベントの前に読んでほしいブログ記事を一本。今回は構成案と前半の下書きまで |
2. 目的と読者 | 近所で子育て中の人に、店で何を相談できるかを知ってもらう。読んだ後に「一度寄ってみよう」と思える状態 |
3. 入れてよい材料 | 自分で書いた店の紹介文、公開中のメニューの説明、面談で話したイベントの趣旨 |
3. 確かめてから入れる材料 | お客さまから届いた感想(本人に使ってよいか聞いてから)、仕入れ先の資料 |
4. 確認してから進める箇所 | 商品の良さを言い切る部分、お客さまの感想に触れる部分、記事を公開するかどうか |
5. 持ち帰るもの | 構成案、前半の下書き、書いていて迷った箇所を三つまで |
この例では、構成案から前半の下書きまでを顧客が一人で進め、主張の中身と公開の判断は次の面談に残しています。原稿の完成を顧客に任せきるのではなく、どこまで進めたら一度戻るかを先に決めておくのがこのメモの役目です。
記入例の言葉はそのまま使わず、自分の顧客の作業に合わせて書き換えてください。
メモを渡すときに外していること
作業メモには、あえて書かないことがあります。
ツールが出したものをそのまま公開してよい、とは書かない。 公開の判断は確認する箇所に置きます
顧客の情報を何でもツールに入れてよい、とは書かない。 材料は「入れてよい」と「確かめてから」に分けます
一人で最後まで進められる、とは書かない。 戻る場所があることがメモの前提です
ログインや操作の手順を詰め込まない。 操作の質問の受け方は別に決めておき、メモは作業の意図に絞ります
書かないことを決めておくと、顧客は「このメモの範囲なら一人で進めてよい」と安心して動けます。
自分の事業で使うだけなら、メモは自分宛てに書けばいい
ここまでは顧客にツールを渡す場合の話です。顧客への提供は必須ではありません。自分の事業でAIのツールを使うだけなら、同じ五欄を自分宛てに書いておくと、作業を途中で止めた時に再開しやすくなります。何を作りたかったのか、どの材料を使ってよかったのか、誰に確認するつもりだったのか。翌日の自分も、メモがなければ面談の後の顧客と同じように迷います。
まとめ
顧客にAIツールを渡すとき、リンクだけでは面談で決めたことが作業まで届きません。次の五欄の作業メモを添えます。
作業で作りたいもの — 一つだけ、終わりが見える粒度で
面談で合意した目的と読者 — 顧客の言葉で
入れてよい材料と、まだ確かめていない材料 — 分けて書く
人に確認してから進める箇所 — 一人で決めない点を先に
次の対話へ持ち帰るもの — 顧客が選んで共有する
書けない欄があれば、それが道具を渡す前に対話で決めることです。
自分の事業で使う道具と、顧客に渡せる道具を一つの場所で持つ形は、サービスの説明ページにまとめています。



